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車載Ethernet 入門 — 100/1000BASE-T1・時刻同期・計測

車載 Ethernet は、オフィスの Ethernet とは物理層が異なります。1対の撚り線で全二重通信を行う 100BASE-T1 / 1000BASE-T1 が使われ、コネクタもケーブルも別物です。この前提を外すと、機材選定の段階でつまずきます。

目次

物理層とマスタ/スレーブ

100BASE-T1(旧 BroadR-Reach)と 1000BASE-T1 は、1対(2線)で全二重を実現します。線材を減らして重量とコストを下げることが目的です。

重要なのは、リンクの両端がマスタとスレーブに分かれることです。両端を同じ設定にするとリンクが上がりません。評価用の機材を接続する際は、この設定を確認してください。

PoDL(Power over Data Line)で給電する構成もあります。対応の有無と電力クラスを、機器選定時に確認してください。

メディアコンバータと TAP

PC の通常 Ethernet ポートは 100/1000BASE-T1 に直接つながりません。評価・計測では、メディアコンバータで相互変換します。

TAP(分岐)は、下流の ECU へ信号を透過させながら、同じデータを複製して計測系へ流す機器です。「記録のために信号経路を切らなくてよい」ことが、実車計測では決定的な違いになります。

コンバータと TAP は目的が異なります。信号を受けて処理するのか、透過させながら観測するのかを先に決めてください。

時刻同期 — 合わせることと、同時に取ることは別

IEEE 802.1AS(gPTP)および IEEE 1588(PTP)は、ネットワーク上の機器の時刻を合わせる仕組みです。

ここで多くの計測系がつまずくのが、時刻を合わせることと、センサが同一の瞬間にデータを取得することは別問題だという点です。PTP で同じ時刻を配っても、各カメラが同じ瞬間に露光している保証にはなりません。

厳密な同期が必要なら、共通トリガー(FSYNC 等)を全センサへ配信し、かつ取得時刻を共通時刻ドメインへ関連付ける、二段階の設計が必要です。また、タイムスタンプがハードウェアで付与されるか、ソフトウェアで付与されるかによって、達成できる精度が変わります。

計測での帯域設計

多カメラ構成では、非圧縮 RAW データの帯域が最大の制約になります。解像度・ビット深度・フレームレート・HDR の露光数・台数から必要帯域を算出し、記録側の持続書込み帯域(ピーク値ではなく)に収まるかを確認してください。

SerDes(GMSL2、FPD-Link III、CSI-2)から Ethernet への変換器は、1台あたりの出力ポート数が決まっています。変換器の台数×出力本数と、レコーダの入力ポート数の整合が、構成設計の起点になります。

適合性試験(OPEN Alliance TC8)

OPEN Alliance TC8 は、車載 Ethernet ECU の試験仕様です。物理層から上位層までを通した試験項目が定義されており、OEM から適合性の証明を求められることがあります。

自社で試験設備を持つか、認定ラボへ委託するかは、頻度と対象製品数で判断するのが現実的です。ISO/IEC 17025 認定ラボの成績書を要求されるケースもあります。

スイッチとネットワーク設計

車載・産業向けのマネージドスイッチは、VLAN・QoS・ポートミラーリングに加え、時刻同期のトランスペアレントクロック対応が選定条件になることがあります。

計測用途では、ミラーポートの帯域が本線を捌けるか、ミラーによって遅延・欠落が発生しないかを確認してください。

よくある質問

通常の Ethernet 機材で車載Ethernet を評価できますか?
できません。物理層が異なるため、メディアコンバータが必要です。また、リンクのマスタ/スレーブ設定を合わせる必要があります。
PTP を入れれば同期の問題は解決しますか?
時刻の共通化はできますが、センサが同時にデータを取得する保証にはなりません。厳密な同期が必要な場合は、共通トリガーの配信と、ハードウェアタイムスタンプによる取得時刻の記録を併用してください。
計測システムの構成を相談できますか?
はい。センサの種類と台数、解像度とフレームレート、必要な記録時間、同期の要求精度をお知らせいただければ、帯域とストレージの見積もりを含めてご提案します。

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