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UDS / DoIP 車載診断入門

UDS(Unified Diagnostic Services、ISO 14229)は、車載 ECU に対する診断通信の共通サービス体系です。故障コードの読み出し、パラメータの読み書き、ルーチンの実行、ファームウェアの書き換えまでを、統一されたサービス ID で表現します。

目次

UDS はサービスの集まり

UDS では、やりたいことごとに SID(Service Identifier) が割り当てられています。代表的なものは、診断セッション制御(10h)、ECU リセット(11h)、セキュリティアクセス(27h)、データ読み出し(22h)、データ書き込み(2Eh)、DTC 読み出し(19h)、ルーチン制御(31h)、ダウンロード要求(34h)、データ転送(36h)です。

ECU 側は、要求されたサービスを受理するか、否定応答(7Fh)に NRC(Negative Response Code)を添えて拒否理由を返します。実装のバグは、この NRC の使い方に現れやすい部分です。

セッションとセキュリティ

UDS は診断セッションという概念を持ちます。デフォルトセッションでは限られたサービスしか使えず、拡張セッションやプログラミングセッションへ遷移して初めて、書き込みやリプログラミングが可能になります。

さらに、危険な操作の前にはセキュリティアクセス(27h)が要求されます。ECU が発行したシードに対して、正しいキーを返せた場合のみロックが解除されます。この鍵アルゴリズムの管理と配布は、実務では設計そのものより厄介な論点になります。

8バイトを超えるデータ — ISO 15765-2

CAN 上で UDS を使う場合、8バイトを超えるメッセージはISO 15765-2(CAN-TP、ISO-TP)で分割転送します。単一フレーム(SF)、先頭フレーム(FF)、連続フレーム(CF)、フロー制御(FC)の4種類で構成されます。

フロー制御のブロックサイズ(BS)と最小間隔(STmin)の設定は、転送時間に直結します。リプログラミングの所要時間が想定より長い場合、まずここを確認してください。

DoIP — Ethernet 経由の診断

DoIP(Diagnostics over IP、ISO 13400)は、車載 Ethernet 上で診断を行う仕組みです。CAN の帯域では現実的でない大容量のファームウェア転送を、桁違いに短時間で行えます。

DoIP では、車両検出(Vehicle Identification)、ルーティングアクティベーション、そして診断メッセージの送受信という手順を踏みます。UDS のサービス自体は CAN の場合と共通で、下位の運び方だけが変わる、と捉えると理解しやすいです。

実務では、CAN 診断と DoIP を併存させ、対象 ECU やデータ量に応じて経路を切り替える構成が一般的です。

ODX と A2L — データベースの使い分け

ODX(ISO 22901)は、診断に関する情報を記述する標準フォーマットです。どの ECU にどのサービスがあり、どの DID がどんな意味を持つかを機械可読な形で持ちます。配布用にパッケージ化したものが PDX です。

A2L(ASAM MCD-2 MC)は、測定・校正(XCP/CCP)のためのファイルです。ECU 内部変数のアドレス・変換式・特性マップを記述します。

この2つは目的が異なります。診断は ODX、測定・校正は A2L。ツールを選ぶ際は、手元にある資産がどちらの形式かを先に確認してください。

開発工程ごとの使いどころ

開発初期は、ECU シミュレーションで診断仕様を先に固めると手戻りが減ります。実機が出てきたら、診断ログの取得と仕様との突き合わせ。量産前には、並列フラッシュによる書き込み時間の検証。サービス工程では、現場向けにカスタマイズした診断ツールが必要になります。

工程ごとに別ベンダーのツールを使うと、ODX 資産の変換で消耗します。同一系列でそろえられるかは、選定時に見ておく価値のある観点です。

よくある質問

UDS と OBD は何が違いますか?
OBD は排ガス関連の法規診断で、車種を問わず外部の汎用スキャンツールが読める必要があります。UDS はメーカーが自由に定義できる診断体系で、開発・生産・サービスで使います。実装上は、同じ ECU が両方に応答することが一般的です。
DoIP に移行すると CAN 診断は不要になりますか?
通常は併存します。すべての ECU が Ethernet に接続されるわけではなく、また既存のサービス工程が CAN 前提で動いていることも多いためです。移行計画では、両方を扱えるツールと、経路の切り替え方針を決めておいてください。
診断環境の構築を相談できますか?
はい。対象プロトコルと版数、既存の ODX/A2L 資産、使用する工程(開発/量産/サービス)をお知らせいただければ、構成をご提案します。

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